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僕はなぜ起業したのか①:箱に収まれない…

僕はなぜ起業したのだろう。

実は、僕は大学時代からずっと起業したかった。中学、高校、大学といわゆる英才教育をうけさせてもらえたおかげで、僕は自分の力で生きているという気がずっとしていなかった。親が環境を整えてくれたので自然にそれなりの力をつけることができただけと思っていた。だから、どこかで自分の人生を歩みたかったのだ。いい大学に進学したから大企業に入ることはそれほど難しくなかった。でも、それさえレールの上を走っているだけのような気がしていた。だから、会社を作りたいと思った最初の動機はかっこ悪いくらい「自分探し」に根付いていた。

高校時代に出会ったストリートアーティストたちの影響もあった。勉強して、いい成績をとって、優秀な大学に進むことが何よりも大切と思っていた自分と全く異なる価値観を持つ人がキラキラしているというのは、僕にとっては大事件だった。会社員になって定年まで勤めるというだけが人生じゃないんだということを目の当たりにした気分だった。彼らとの付き合いは、あまりいい影響を僕の人生に及ぼさなかったけれども、それでも貴重な時間だった。

大学に入ったころには「金持ち父さん貧乏父さん」という本がはやり、「経済的自由人」なんて言葉に魅力を感じていたこともあった。金持ちになれば幸せになる、というのは前世紀から今世紀にかけて最大のウソだけれど、若いころの僕はその言葉を鵜吞みしていた。(念のため、僕は金持ちではない。ただ、金持ちが幸せになるのではなくて幸せな人が幸せになれると知っている。)

大学、大学院を出て会社員になると、出身大学によらず「新入社員」は「平等」に扱われ、周りには働き盛りの先輩社員もいれば定年近いやる気をなくしてしまったような先輩社員もいた。僕の時代は給与が年功序列で決まっていたから、これまで自分がしてきたことを否定されたような気持にもなった。あまり知られていないが日本の社会には逆学歴差別というべきものもあり、(僕が生意気だったこともあるのだろうけれど)意地の悪い先輩社員は何かと僕の足を引っ張ろうとした。この経験のせいで、僕は今でも努力している人の足を引っ張る人には厳しくなる傾向がある。

名誉のために言っておくと、僕が最初に入った機械メーカーはとても素晴らしい会社だ。今でもやめたことは正しかったのかと思うくらいだ。僕がこの会社で満足できなかったのは、ひとえに僕の未熟さが原因だったと思っている。

会社員になり、僕は仕事ってつまらないものだと思うようになった。平等主義だと頑張ったところで上司の気持ち一つでチャンスが与えられたり与えられなかったりする。目立たないように平穏に生きるのがよい、というのはサラリーマンの知恵だし正しい選択だと思う。でも、僕はそれが嫌だった。他の人たちと比べて我慢が足りなかった。もっとはっきり言えば、社会的不適合者だった。大学時代、僕は野外演劇を主に行う劇団で舞台美術をしていたが、その時のワクワクを感じられる時間を何とか得たいと思っていた。

僕が最初にとった行動は「転職」だった。

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