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生物多様性と環境破壊のホットスポット、ボルネオの密林から起業を決意。

株式会社バイオーム代表取締役の藤木は、大学時代、ボルネオ島(マレーシア、インドネシア)にて2年間以上キャンプ生活をしながら調査を続けてきた。

アマゾンと並ぶ生物の宝庫であるこの地は、一方で環境破壊の最前線でもある。

藤木はこの地で、360度地平線まで伐採された森林跡地を見て、このままでは地球の未来は危ういなと感じた。
そこは本来、樹高70mにも達する巨大な熱帯林が広がり、野生生物の天国であるはずの場所だったのだ。

大学生時代 ボルネオ島でのキャンプ生活

「ホアホアホアー!ホアホア!」

数か月に及ぶボルネオ島ジャングルでの調査のためのキャンプ生活。
毎日テナガザルの鳴き声で目を覚ます。

麻袋で作った寝床から這い出て、霧の中で目を細めてみても、警戒心の強いテナガザルは絶対に姿を見せない。

キャンプ地の近くで飴色に濁る川の水を沸かしてコーヒーを淹れるのはサルジュニさんだ。

彼は※WWFインドネシアのスタッフで、「森の妖精」の異名を持つ森林調査のスペシャリスト。

彼の功績はすさまじく、ボルネオ島インドネシア領ですでに絶滅したとされていたスマトラサイを発見したこともある。

彼の入れるコーヒーはむせ返るほど甘く、ほとんど砂糖水に色を付けただけというような味だが、うまい。

(※WWF(World Wide Fund for Nature)…世界自然保護基金。自然環境保護の国際的NGO。)

過度な間伐によって荒れ果てた熱帯林で、来る日も来る日も樹木の調査を続けた。

赤道直下の日差しの中、毎日とにかく歩く。
のどの渇きを癒せるのは煮沸した泥水だけで、一日三食、豆と乾麺のみを食べ続けた。

調査をしていると、多くの場合、パイオニア種と呼ばれる10メートルくらいのひょろひょろの樹木が延々と生えていることが多い。

そこは本来、樹高70メートル、23階建のビルにも匹敵する巨木が立ち並ぶ熱帯林だったはずの場所なのに、だ。

無計画に伐採された熱帯無計画に伐採された熱帯雨林

ボルネオ島の熱帯林はひどくいびつな状況にある。

荒れ果てた場所があるかと思えば、すぐ隣に原生林が広がっていることもある。
無計画な伐採による結果だ。

伐採で荒れ果てた土地の空中写真 (上) と原生林本来の巨木 (下)

そうした様々な荒れ具合の森林に40mほどの調査区を設置し、その中に生えている全ての樹木の大きさと樹種名を記録していくのが調査の目的だ。
ボルネオ中の森林にそうした調査区をこれまでに300箇所以上設置してきた。

藤木はこのデータを用いて生物多様性を定量化するアルゴリズムの開発に成功し、その成果で博士号を取得した。

ボルネオ中の様々な場所を調査する中で、ひときわ衝撃を受けたのは、360度地平線まで皆伐され尽くした熱帯林の跡地だった。

原生林をよく知る藤木には、本来そこが野生生物の天国だったであろうことが容易に想像できた。 と同時に、同じ地球上で生きているひとりの人間として、申し訳ない気持ちになった。

この光景が今も藤木の心の原風景となっている。 地球の未来は危ういのではないかと肌で感じた瞬間だった。

下の地図は、ボルネオ島周辺の森林の状況を表しており、地図の赤くなっている部分は2000年以降に森林が消滅した場所を意味している。 たかだか20年弱でこれほどの面積の森林を伐採したというのだから驚きだ。

現在、白亜紀に起こった恐竜の絶滅と同等の大量絶滅が起こり始めていると多くの生物学者の間で考えられている(ex. Barnosky, A. D. et al.2011)。

こうした生物の絶滅は、生活インフラとしての地球システムを崩壊させることは間違いない。
経済的損失は少なく見積もっても450兆円/年になると言われている(国連環境計画2010)。

環境保全は人類の利益

こうした背景の中で、環境への配慮とその証明は、現代の行政・企業にとっては避けられない課題になってきている。

しかし、実は環境(特に生物多様性)の統一された評価方法は全くと言っていいほど確立されておらず (Fujiki et al.,2016,2017)、行政・企業・様々な団体が手探りで環境保全に取り組んでいるというのが現状だ。

大きな原因の一つは「生物分布データ」の不足だと藤木は考えている。

あらゆる情報がインターネットに溢れているこの時代においても、生物の情報は驚くほど少なく、一体どの生物が絶滅の危機にあるのか、どこにどんな生物が生息しているのか、といった基本的なことさえよくわかっていないのだ。

藤木は博士号取得後、世界的な生物・環境のデータベースを創ることを目指して株式会社バイオームを設立した。
環境保全のためのビジネスプラットフォームをつくることで環境問題解決のための支援ができると考えたからだ。

環境は破壊され、利用されることでお金になり、誰かの生活を支えている。
それは当然の営みで、決して批判されるものではない。

しかし、環境は破壊されることでしか利益にならないわけではなく、保全されることもまた、長い目で見れば人類の利益になるのである。

ただ現在、その利益を直接的にお金に換える仕組みはほとんどなく、環境の保全を大きく遅らせているのが実状である。
藤木は、環境の保全が直接的に人々の利益につながる仕組みをつくることこそが何より大切だと考えている。

そこで環境保全をビジネスとして成り立たせる試みとして藤木が取り組んだのが、世界中の生物の情報をビッグデータ化する事業である。
特に現在は、生物の名前を自動で判別できる独自の技術を応用して、生きものコレクションアプリを開発している。

このアプリは、生きものを見つけて図鑑にコレクションしていくアプリであり、様々な生物が身近にいることの価値を全ての人に感じてもらえるものになると考えている。

まだまだ課題は山積みではあるが、環境の保全を“社会の当然”にするべく、株式会社バイオームは事業に取り組んでいる。

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