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デザイン会社への就職活動~人文系学部とデザインの接点を探るVol.2~

よくいただくご質問に「デザイン系の学部ではないのですが、応募は可能ですか?」というものがあります。デザイン会社の選考において、総合大学の学生はどのように準備をして選考に臨んでいたのでしょうか、また選考官側はどのような観点で選考をしているのでしょうか。

人文系学部出身で新卒入社をしたデザイナー田中真帆と、選考を担当しているサービスデザイナー小山田那由他に話を聞きました。

/登場人物:株式会社コンセント|デザイナー 田中真帆(写真右)
同志社大学社会学部メディア学科卒業後、2023年4月にコンセント入社。大学時代は幅広くメディア全般の問題や社会的役割・ジャーナリズムについて学び、ファクトチェックの活動にも従事。現在はサービスデザインのプロジェクトにおいてリサーチ業務と進行管理を担当。キャッチコピーは「ド根性ガール」で、新しいプロジェクトやタスクに果敢に挑戦し、スキルの幅を広げている。
/登場人物:株式会社コンセント|サービスデザイナー 小山田那由他(写真左)
HCD-Net認定 人間中心設計専門家。東京造形大学視覚伝達専攻卒。コミュニケーションを設計する人。デザイン思考、コンテンツデザインのスキルを生かしサービスデザイナーとして企業・行政のサービス開発・改善やデザイン組織化支援を支援。

自分の活動の原点を考える

―大学時代は何をしていましたか?

田中:
同志社大学社会学部メディア学科に所属して、新聞やテレビなどあらゆるメディア(媒体)の研究をしていました。ゼミは主にジャーナリズムに特化していて、ファクトチェックという、社会に広がっている情報が事実に基づいているかどうかを調べ、そのプロセスを記事化して正確な情報を共有する活動に携わっていました。
また、「なにかつくりたい」という思いから制作系の学生団体に入りました。自分の手を動かしてファッションショーイベントの映像や、誌面や募集チラシ、チケットなど、いろいろなものをつくっていました。

―就活の軸はどうやって決めましたか?

田中:
就職活動は大学3年生の秋に本格化して、自分がやりたいことをもとに深堀って就活の軸を決めていきました。
当時は、つくりたいという手段が先行して、どうしてつくりたいのか?といった制作することの「目的」がはっきりしていなかったと思います。そこで、どうしてこれをつくりたいと思ったんだろう?とか、つくった先に何があるといいんだろう?ということを考えました。
そういうことを考える中で、身の回りの不便なことを解決したいとか、課題を解決して現状よりも世の中をよくしたいという思いがあるなと気づいて、社会の課題を解決できる仕事に就きたいと思うようになりました。

―エントリーに向けてどんな準備をしましたか?

田中:
大学のキャリアセンターでエントリーシートの添削をしてもらった時は、「いいんじゃない?」と肯定されてしまい、具体的な修正点が見つかりませんでした。それでも書類選考の通過率が良くなくて悩んでいた時に、X(旧Twitter)を使って就活生のお助けマンとしてエントリーシートの添削などの活動をしている方に連絡をとりました。IT企業の人事を担当されている方だったので、実際に人事の方からみてどうかという意見を聞いたり、添削してもらったりするようになりました。
自分がつくった書類に対して「ふわっとしていて何が言いたいのか分からない」と指摘されたのを覚えています。アドバイスをもらいながら、動機があって、それに対する行動がこれで、こういった動機や行動は御社とマッチングしていますよね、という順になるように繋がりを意識して文章を組み立て直しました。
自分のやりたいことだけをアピールするのではなくて、自分のやりたいことがその企業にマッチしていることのアピールをするようになって、そこから通過率も高くなりました。

スキルだけでなくの人の考え方を知りたい

―エントリー時に提出された資料を見ていてどんなことを思いますか?

小山田:
書類選考では、付属資料としてポートフォリオ(※)を提出する人もいれば、論文を提出する人もいます。履歴書やエントリーシートなどの作文だけでは判断が難しいことも多く、悩ましいですね。
コンセントの新卒採用には評価基準がありますが、それだけではなくて、この人の考え方っていいなぁとか、うちの環境で活躍できるかもしれないというマッチングをみているんです。
たとえば、イラストレーターやフォトショップとか、そういうツールがどれくらい使えるかというインジケーターをポートフォリオに付けている方がいらっしゃるんですが、個人的には入社時点でのスキルはあまり問わないです。
むしろどういうことを考えて、ものをつくっているかっていう、その学生さんの考え方がいちばん知りたいんですよね。

※ポートフォリオ … 制作物や活動実績などをまとめたドキュメントのこと。コンセントでは、これまで取り組んできたことや自分の考え方、何ができて、どんなことに興味・関心があるのかなど、人となりを伝えるための資料と捉えています。

田中:
たしかに他者にポートフォリオを添削してもらう前は「学生時代に力をいれたこと」など功績だけを淡々と書いていたんです。それに対してフィードバックされたのは、そのプロジェクトでやったことに対して何を学んだのか、どうしてそれに携わりたいと思ったのか、自分の考え方や思いにも触れて書くといいよと言われました。

事業や業務に関係ないエピソードも話してみる

小山田:
コンセントの選考の特殊性を感じるところは、たとえば学生時代に文学をやっていた人がいたとして、その文学研究の目の付け所がおもしろかったら好印象に映ることがあります。
僕だったらその話から「コンテンツディレクション能力がありそうだな」と感じるのでアピールポイントになると思います。
そういう意味では「真面目に研究していました」などもアピールしてほしいです。
新しい着眼点を獲得して、それを新しい考え方に転換するって、まさにデザインのプロジェクトでやっていることそのものなので、一見して事業や業務に関係なさそうなことだったとしても一定の能力がすでに発揮されているのであればそれを仕事でもできるだろうと思います。
だから、これたぶん関係ないなと除外しちゃうとすごくもったいないのかなという気がしています。

―自分をアピールするためのエピソードはどのように選んでいましたか?

田中:
アピールする時は、とりあえずいっぱい話のタネをばらまくことを意識していて、どれかひっかかれ!という気持ちでした。どれか興味をもってくれたらそれに対して深掘るというのをしていましたね。
学生団体の他にも、ミスキャンパスの運営とか、いろいろ活動していて、就活のために新しく行動を起こすということはなかったですね。純粋に自分がおもしろいと思ったことや興味をもったことをたくさん経験してきました。エピソードはかなり用意できていたので、その経験についていかに面接官の方におもしろがってもらえるかを考えました。

―コンセントの面接はどんな印象でしたか?

田中:
オンライン面接で、面接官は4~5人いました。驚きました!(笑)
自分が活動してきたことに対して本当に興味をもってくれて、活動の目的とか、何を学んだとか、どういう気づきがあったとかをとにかくたくさん聞かれて答えました。そこまで自分のやってきたことに対して深掘って聞いてくれる面接は他になかったので印象的でした。
あと私は、作戦を考えて挑むタイプだったので、印象づけるために自己紹介のあとで自分のキャッチコピーを付けて、その根拠となる話題を言うというのをやっていました。
キャッチコピーは「ド根性ガール」。根性あるエピソードをいくつか話していき、面接官の方が気に入ったものを深掘ってもらうスタイルでした。

質問からディスカッションへ

―コンセントの仕事を理解するために面接ではどんなことをしましたか?

田中:
面接の後半で、私から面接官の皆さんに聞きたいことを質問する時間があり、新卒採用サイトを見ても分からなかったことをいろいろ聞きました。私はデザイン系の学部出身ではなかったので、「サービスデザイン」が何かすら分からない状態だったんです。
ナイトセッション(※)や新卒採用サイトを見ても理解しきれなかった部分については、サービスデザインって何ですか?と聞いて丁寧に答えてもらえたので、ここまで聞いて良いんだ、と思いました。

ナイトセッション … コンセントが主催している就活生向けイベント。
2023年実施|DAY1
https://www.wantedly.com/companies/concent/post_articles/485997
2023年実施|DAY2
https://www.wantedly.com/companies/concent/post_articles/496058

―こういった質問をされた時どう思いますか?

小山田:
もちろん、調べられる部分は自分で調べてほしいなと思いますが、答えがひとつではないと思うので、あなたは(面接官は)どう考えていますか?と聞かれるのはいいと思います。ここまでは分かったけど、ここから先は分かりませんなど聞いてもらえると、柔軟な考え方をもっているんだなとも思えますし、話をしていくなかで応募者が「そういうことであるならば私はこういうことがやりたい」というように話が広がっていくこともいいと思います。

深掘り質問に対して正直に話す

―小山田さんは面接官としてどうやって話を引き出していますか?

小山田:
ポートフォリオの説明だとアウトプットの話が中心に語られることが多い印象があるので、背景でどういうことを考えていたのかとか、感情や思考の部分をもう少し詳しく教えてください」っていうように伺ったりします。
そこでたとえば、「このプロジェクトは正直学校の課題だったから制作しただけなのですがその代わりにアウトプットに極振りしてめちゃめちゃカッコイイやつつくったんですよ」みたいな話をされたら僕は好印象です。結局その機会に対してどういうことを考えて何をやったのかという、姿勢や考え方がおもしろいかを知りたいのでやっぱり正直に話してほしいです。
それはたぶん付け焼刃だとどうにもできなくて、プロジェクトをやっている間に考えていないと出てこないことだと思います。そのプロジェクトごとにしっかり考えて、やってやる!という気持ちがいちばん大事なのかなと思いますね。
大学卒業時点でのその人の能力を見極めるのはものすごく難しいし、何度も話をできるわけではない中で判断しなければならないので、やっぱり正直に話してもらったほうが分かりやすいと感じています。

田中:
たしかに、下手に話を盛ったりするとすぐ見破られる気がします。コンセントの面接は特に、やっぱり深掘りがすごかったので。
深掘り質問をしてもらったおかげで、自分の「学生時代に力を入れたこと」を書き直したりとか、自分の動機に気づけたりとか、新しい気づきの場になりました。
答えを用意していなくてすぐに答えられなかったこともありましたし、言語化がすごく難しかったのですが、面接官の方との対話の中でまだ言語化できていない部分を引き出してもらった感覚がありました。

小山田:
マッチングの観点でもそれはよかったのかもしれないですね。
どこかに正解があると思っているタイプの人には深堀り質問を乗り越えるのはちょっとしんどいと思います。正解はなくて、あくまでも自分が考えたこととかの背景をありのままに答えれば問題ありません。それが良いとか悪いとかということはコンセントの面接では気にしていなくて、まずはファクトを知りたいという感じで深掘りをしています。

デザイン会社を志す学生へのメッセージ

―デザイン会社で働くこと志して活動されている学生に向けてアドバイスをするとしたら、何がありますか?

田中:
ちょっと良く見せるのも大事だとは思いますが、正直ベースで話してその企業と合わなかったらそれまでだなと思えばいいし、正直に話して企業側が良いと思ってくれるならきっと相性が良くて、それこそ成功だと思います。
小山田さんが言うように、正解を求めすぎず、自分の思うように、思った通りに話すことが、きっと今後働き始めてからも楽しく仕事ができるのではないかと思いますね。

小山田:
どういう学校で勉強しているかとかに関わらず、なるべく正直に自分の考えていることを出していくということと、なるべく戦略的に考えることを両方意識してもらえるといいのかなと思います。
学生さん本人にとっては自分の活動や作品がメインなのですが、面接官からすると応募者の中には同じような活動をしてきた方々もたくさんいるので、他の人と違うユニークな点をいかに見せていくかを意識するのがいいと思います。もし力をかけられるのなら、第一志望の企業の価値観に合うように最適化して準備するのはベストなのですが、実際には複数社受ける時にどこまで汎用化できるんだっけ?ということも考える必要がでてきますよね。そういった場合にどんなアプローチをするのかということに意識的に取り組めると、それ自体がデザイン的なアプローチの練習になっていいのかなと思いました。
就職活動は、自分自身のブランディングプロジェクトと見立てることもできると思いますので、工夫して取り組んでみてほしいですね。


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