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M&Aは20社以上の実績!グローバル展開の鍵となるM&A戦略を大公開 テラドローンが狙う次なる市場は「農業」

こんにちは、テラドローン取締役の神取(@kotakandori)です。
この度、テラドローンは子会社のTerra Drone Indonesiaを通して、インドネシアの農薬散布事業のリーディングカンパニーであるAvirtech社の事業を買収したことを発表いたしました。

テラドローン、農業事業に本格参入 世界初の技術を有するドローン農薬散布事業のリーディングカンパニーAvirtechの事業を子会社が買収Terra Drone株式会社のプレスリリース(2023年9月21日 09時00分)テラドローン、農業事業に本格参入 世界prtimes.jp

「なぜ、テラドローンがインドネシアで農業?」と感じている方もいらっしゃるかもしれません。テラドローンは2016年の創業時からすでにグローバル展開を意識した事業戦略を行ってきました。直近で発表したUniflyの子会社については、創業からわずか9ヶ月後にUniflyに投資を実施しています。これまで累計20社以上のM&Aを繰り返して、事業成長してきました。

テラドローン、運航管理システムプロバイダーのリーディングカンパニー・ユニフライを子会社化Terra Drone株式会社のプレスリリース(2023年8月22日 09時00分)テラドローン、運航管理システムプロバイprtimes.jp

グローバル展開を拡大するテラドローンにとって、今回の買収は、ミッションや事業成長の上で非常に大きな可能性を秘めています。

今回は、実際に交渉に携わった立場より、テラドローンにさらなる進化をもたらす本件の買収背景や経緯を中心にお伝えします。

簡単な自己紹介

本題に入る前に、少しだけ自己紹介をいたします。
私は大学生の時からテラモーターズのメンバーとして働き、2011年には社内で初めての海外駐在員として中国で活動してきました。これまで海外をメインにキャリアを重ね、M&Aの候補となる企業の発掘やインドネシア、マレーシア、サウジアラビア、オランダにある海外子会社の経営管理を担当してきました。

2019年からは国内の事業統括も合わせて担当し、現在は取締役として日本の事業全体の統括と海外子会社の経営管理を担当しています。今回の買収については責任者として調査から交渉、買収決定まで行いました。

買収の背景について

ここからは、買収までの背景を語ります。テラドローンの創業当初、実はターゲットとしていた市場は農業分野でした。ただ、単価と活用頻度を考慮した上、採算面から農業ドローンの事業を展開することは現時点では厳しいとの判断を下し、測量のフィールドをメインに事業を伸ばしていきました。その後、2019年に、インドネシアでドローンのサービスを展開している企業を買収し、Terra Drone Indonesiaを設立いたしました。それからはインドネシアの事業成長を進めてきました。

インドネシアで事業を展開をしていると、植物油の原料となるパーム油栽培の現場でドローンを活用した農薬散布がここ1~2年で急激に広がっていると耳にするようになりました。背景には、コロナ禍の影響で人手不足が進み、農薬散布ができる人材を確保しづらくなったことがあります。

そうした事情もあり、創業期と比べるとドローンの活用頻度や単価が高まったことで市場が広がり、農業分野での成長可能性が高まっています。インドネシアは大規模に農業を展開し、パーム油の栽培面積は約1500万ha(2021年時点)とも言われています。インドネシアは、実際に世界のパーム油生産の半分以上を占めています。国の成り立ちや農業の産業構造からも、一定の市場規模があって参入に適した状況にあります。

ただ、既に競合が参入している市場でもあり、シェアを確保するにはそれなりの資本が必要です。さらに、日本より国土が広い現地ではドローンパイロットたちのマネジメントをする難しさもあります。今回買収したAvirtech社は既にそうしたマネジメントを確立し、現地で高い競争優位性を持っています。当初、現地の財閥もAvirtechの買収を検討していたようですが、現時点では利益が出づらい構造でもあり、我々のように事業を伸ばす観点があるスタートアップでなければなかなか一緒にビジネスをするのが難しいと思います。

Avirtech社買収のきっかけ

そもそもAvirtech社とは、私が2018年に海外企業のM&Aで色んな国を回っていた時に担当者に会う機会があったのが最初でした。当時はオイルガスの点検など農業とは異なる事業を展開していたので、テラドローンとしては買収の話はあがりませんでした。

その後、2022年12月にTerra Drone Indonesiaの統括になり、営業会議の中で農業分野に進出する話があがりました。そこで市場調査を進めていくと、Avirtech社がドローンを活用したパーム油の生産現場における農薬散布で既に業界最大規模の会社になっていることがわかりました。

Avirtech社は市場への参入が早かったこともありますが、現地の状況に合わせた開発力が高かったことも他社と比べた競争優位性につなげています。また、2021年には世界初の高精度に農薬散布ができる技術を開発しました。その高い技術もあり、これまでに累計200,000ヘクタール以上の面積で、1日あたり最大4000回の飛行を実施。高精度の農薬散布で、最大30%のコスト削減を実現し、150機以上のドローン普及の実績があります。

テラドローンがこのような状況で現地でゼロからやる場合、時間と資金を要します。それであれば、買収に動いた方が早く事業展開できることから高い技術力と実績を持っているAvirtech社と交渉を始めました。

交渉から買収まで

買収までのプロセスは、詳細なリサーチと精査が不可欠です。2023年1月に我々はインドネシアに足を運び、現地の市場の動向や状況を直接観察しました。この調査を通じて、Avirtech社の強みや特色を確実に感じ取ることができました。続く2月から3月にかけては、Avirtech社に1ヶ月常駐し、単に財務資料やPitch Deckからは読み取れない深層の人間関係や企業文化に目を向けました。この徹底したデューデリジェンス(DD)は、不確実要素を減少させ、情報の均衡を図るためのテラドローンの特定の戦略として位置づけられています。重要なのは事業の市場規模があるかと、それが現時点で顧客に受け入れられるかを見極める必要があります。

これにより、交渉は円滑に進められ、安心と自信を持って買収を実行することができました。今回の買収では、Terra Drone Indonesiaを通じての取り組みもあったため、既にインドネシアの文化や価値観を理解しているため、交渉の一助となりました。M&Aを成功させるためには、対象国の文化や特性
を十分に把握することが欠かせません。

今回の買収における重要ポイント
①徹底的なDDをして、懸念材料を払拭する
(常駐する必要があるならするべき)
②市場規模が一定あり、その事業が現時点で顧客に受け入れてもらえるか
(市場規模だけあっても顧客が納得しないと事業にならない)
③海外では特に対象国の文化や特性を十分すぎるほど把握すること
(自社だけで難しい場合、専門家に頼るのも大事)

今後の展開について

今回、Avirtech社からパーム油の農薬散布サービスの事業を引き継ぎ、インドネシアとマレーシアに展開します。インドネシアは子会社のTerra Drone Indonesiaが、マレーシアは新設するTerra Drone Agriが事業を行います。

パーム油栽培の農薬散布を人力で行う場合、薬品による健康被害のリスクが指摘されてきました。また、劣悪な労働環境に対しても、ドローンによるテクノロジーを活用していくことで価値を提供していきます。また、パーム油生産はあらゆる環境面での問題があります。今後テラドローンとしては、その環境面にも配慮しながらサスティナブルな栽培支援を積極的に考えていきます。

作業の効率性や確実性からもドローンの可能性は広がっています。人手による農薬散布ですとどこに散布したかわからないこともありますが、ドローンを活用することで、飛行したルートや散布した場所をGPS上に記録として確認できるメリットがあります。

インドネシアは経済成長も進んでいるため農業に従事する人が減少し続けることが想定されます。そうした時にドローンをはじめテクノロジーを活用しないと、農業が産業として立ち行かなくなるリスクを抱えています。私たちはこうしたインドネシアなどの新興国が抱える課題を見越し、まずは現地でのシェアを広げ、今後グローバル展開を検討していきます。

最後に

Avirtech社の買収について背景と交渉プロセスなどについてお伝えいたしました。私自身、創業期から海外に飛び回り様々な企業との交渉を繰り返してきて、ある程度海外企業との交渉の型というものがわかってきました。テラドローンは今後も事業拡大をする上でM&Aという戦略を行っていく予定です。ぜひ私たちと一緒にグローバル展開を目指していただける方、今回の買収について詳しく知りたい方など、カジュアル面談のお申し込みをお待ちしています。一緒に世界で勝てるスタートアップを目指しましょう!

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